Guides

書き方ガイド

法務の職務経歴書の書き方|採用担当に伝わる記入例と無料テンプレート

法務の職務経歴書の書き方|採用担当に伝わる記入例と無料テンプレート

法務の職務経歴書は、「契約書審査、法律相談、株主総会対応、コンプライアンス」と業務名を並べただけになりがちです。採用担当が知りたいのは、どの業界で、どの種類の契約を、月に何件、どこまで自分で判断してきたかです。

法務の成果は売上のような数字になりにくく、取引先名など書けない情報も多い仕事です。件数・日数・ひな形の数のように「書ける数字」を選び、秘密に触れずに経験を伝える工夫が必要です。

この記事では、エネルギー会社で営業を3年経験したのち法務部に移り、契約審査を中心に8年半を担ってきた人の記入例をもとに、項目ごとの書き方を解説します。一人法務・上場企業の法務部・英文契約・法律事務所から企業への転職といったタイプ別の書き分け方も紹介します。

この記事でわかること

  • 法務の職務経歴書の完成イメージ(記入例)
  • 公的なデータから見た法務の仕事の範囲と、企業内弁護士・ビジネス実務法務検定の位置づけ
  • 契約の種類・審査件数・回答日数の書き方と、OK例・NG例の違いの理由
  • 取引先名や案件の中身を出さずに経験を伝える、秘密を守った書き方
  • 一人法務・上場企業の法務部・英文契約・法律事務所出身のタイプ別の書き分け方
  • 2026年の法務とAI:AIの経験を職務経歴書にどう書くか

無料テンプレート

法務の職務経歴書、記入見本つきのテンプレートがあります

この記事の記入例と同じ形式で、Word・Excel・PDFの3形式。空欄のテンプレートと記入見本がセットになっています。

法務の職務経歴書の記入例

まずは完成イメージです。電力・ガスの小売と再生可能エネルギーの発電所の開発を手がける上場企業で、法人営業から社内公募で法務部に移り、現在は主任として契約審査を担っている人を想定しています。画像をタップすると拡大できます。

法務の職務経歴書の記入例(エネルギー企業の法務 8年半・契約審査中心)
法務の職務経歴書の記入例(A4・2枚)

この記入例と同じ形式のテンプレートを無料で用意しています。Word・Excel・PDFの3形式で、それぞれ空欄テンプレートと記入見本の2点セットです。

データで読む:法務は「何をしてきたか」より「どこまで自分で判断してきたか」で比べられる

書き方に入る前に、法務の仕事と人材がいまどうなっているかを、公的なデータと団体の統計で見ておきます。3つの資料を重ねると、見えてくることは1つです。ほとんどの法務が同じ業務を担い、企業で働く弁護士も増えたいま、差がつくのは業務の名前ではなく、どの契約・案件を、どれだけ、どこまで自分で判断してきたかです。

契約審査も法律相談も、ほぼ全員の仕事。だから業務名では差がつかない

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で「企業法務担当」として働く人の業務を見ると、各部門からの法律相談や訴訟・係争への対応、法改正などの情報収集が、ともに94.6%と最も多くなっていました。契約書の作成・審査と締結交渉は87.5%、内部統制やコンプライアンスの体制づくりは85.7%です。

企業法務担当の業務の実施率。法律相談94.6%、契約書の作成・審査87.5%
企業法務担当の主な業務の実施率:契約・相談・ガバナンスは8割以上が担う(厚生労働省 job tag)

出典:職業情報提供サイト(job tag)「企業法務担当」(厚生労働省) タスク

就業者へのWeb調査による値で、回答者は数十人規模のため、細かな差に意味はありません。それでも、法務の多くが契約だけでなく相談・ガバナンスまで幅広く担っていることは読み取れます。裏を返せば、「契約書審査、法律相談」と書いても、ほかの応募者とほとんど同じ言葉になるということです。

差が出るのは、業務名の中身と、担う人が限られる仕事です。同じ調査で、海外の業務にかかる法務は66.1%、M&A関連は60.7%、広告の審査は55.4%で、回答者の3〜4割あまりは担当していません。記入例が「月平均約45件(うち英文 約4件)」と件数と英文の割合を書き、コーポレートPPAのような業界特有の契約を挙げているのは、同じ「契約審査」でも中身が違うことを示すためです。海外案件やM&Aの経験があれば、はっきり書きましょう。

企業内弁護士は10年で約2.2倍。資格ではなく、案件の近さで勝負する

日本組織内弁護士協会の「企業内弁護士数の推移」によると、会社などに勤める企業内弁護士は2026年6月時点で3,756人でした。10年前の2016年(1,707人)の約2.2倍で、登録している弁護士全体の7.8%にあたります。

企業内弁護士の人数の推移。2016年1,707人から2026年3,756人へ
企業内弁護士の人数の推移:10年で約2.2倍に(日本組織内弁護士協会、各年6月時点)

出典:企業内弁護士数の推移(2001年〜2026年)(日本組織内弁護士協会)(2026年7月調査)

弁護士資格を持つ人だけの数で、法務部員全体の人数ではありません。それでも、企業の法務部門に弁護士が加わる流れは10年続いています。資格を持つ人と同じ求人に並ぶこともある前提で、書類をつくっておきましょう。

とはいえ、資格の有無より先に見られるのは、応募先の案件をどれだけ経験してきたかです。業界特有の契約や事業部門との交渉の経験は、資格だけでは示せません。資格を持たない人は扱った契約の種類と件数、外部の法律事務所との役割分担を、弁護士の人は「会社の立場でどう判断し、事業を前に進めたか」を具体的に書きましょう。

ビジネス実務法務検定2級の合格率は39.8%。資格は「どこまで任せられるか」の目安になる

法務の実務知識を測る資格として広く知られているのが、東京商工会議所の「ビジネス実務法務検定試験」です。2025年度の受験者データでは、合格率は3級47.6%、2級39.8%、1級9.2%でした。

ビジネス実務法務検定試験の級別合格率。2級39.8%、1級9.2%
ビジネス実務法務検定試験の級別合格率:2級は4割弱、1級は1割未満(東京商工会議所、2025年度)

出典:ビジネス実務法務検定試験 受験者データ(東京商工会議所)

受験案内では、2級の程度を「弁護士などの外部専門家に対する相談といった一定の対応ができる」水準としています。1級は論述形式で、2025年度の実受験者は521人、合格者は48人でした。

「外部の専門家に相談できる」という2級の定義は、採用担当が知りたい「自分で判断できる範囲」の物差しとして読めます。資格は知識の土台を、実務の件数はその知識を使ってきた量を示します。資格欄には「ビジネス実務法務検定試験 2級(東京商工会議所)」と正式名称・級・実施団体と取得年月を書き、経験が浅い人ほど実務の件数と並べて示しましょう。

まとめると、法務の職務経歴書では、業務名を並べるより、扱った契約・案件の種類と量と自分で判断した範囲を書けるかで差がつきます。ここからは、採用担当がそれをどう確かめているかを3つに整理します。

法務の職務経歴書テンプレートを無料でダウンロード

採用担当が法務の職務経歴書で見ている3つのこと

こうした変化と、法務の採用の現場でよく言われる傾向を踏まえると、採用担当は書類から次の3つを確認しています。どの項目を書くときも、このどれかが伝わるかを意識しましょう。

  1. 扱ってきた契約・案件の種類と量どんな業界で、どの種類の契約を月に何件審査してきたか。英文契約や業界特有の契約、機関法務の経験があるか。応募先で日々届く案件にどれだけ近いかを、採用担当は最初に確かめます。
  2. 自分で判断できる範囲契約審査を一人で完結できるのか、上長や外部の法律事務所にどこまで相談していたのか。担当の範囲と役割が書かれていると、入社後すぐに任せられる仕事の水準を判断できます。
  3. 事業への関わり方リスクを指摘するだけでなく、代わりの条項案や交渉方針を示せるか。ひな形や依頼の仕組みを整えて、事業部門が動きやすくなったか。法務が事業を前に進めた結果を、数字で見ています。

もう一つ、法務ならではの見られ方があります。職務経歴書に取引先名や案件の中身を書いていないかどうかで、秘密を扱う姿勢も判断されます。

項目別の書き方:OK例とNG例の違い

ここからは項目ごとに、NG例とOK例を並べて解説します。OK例は記入例からの引用です。

職務要約:経験年数・業界・担当分野・主な成果を3〜5行で

職務要約では、法務としての経験年数に加えて、担当してきた分野の内訳と、契約審査の量を必ず入れます。法務の仕事は幅が広いため、「どこが得意か」を最初に示すことが大切です。

× NG例

大学法学部を卒業後、エネルギー会社に入社し、法務部にて契約書審査、法律相談、株主総会の運営など法務業務全般に従事してまいりました。

ここが惜しい

  1. 「法務業務全般」では、どの分野にどれだけ携わったのかがわからず、得意な領域が見えません。
  2. 審査件数や英文契約の有無がないため、業務量と経験の幅を応募先と比べられません。
  3. 株主総会の運営を主担当で回したのか、補助だったのかが書かれておらず、役割の重さが伝わりません。

○ OK例

大学法学部を卒業後、2015年4月に電力・ガス事業の株式会社サンプルエナジーに入社しました。法人営業を3年経験したのち、2018年から法務部で8年半、契約審査を中心に、コンプライアンス対応と株主総会・取締役会の運営補助を担当しています。現在は主任として月平均約45件(うち英文 約4件)の契約審査を行い、初回回答までの日数を平均5.2日から3.1日に短縮しました。

ここが評価される

  1. 契約審査を中心に、コンプライアンス・機関法務と担当分野を書き分けているので、得意な領域と経験の幅がひと目でわかります。
  2. 月の件数と英文の割合があるため、業務量と英文契約の経験を具体的に判断できます。
  3. 「運営補助」と役割を正直に書いたうえで、対応を速くした成果を前後の数字で示しています。営業経験がある点も、事業部門との距離の近さとして伝わります。

職務経歴:会社の業界・規模・上場区分と、法務部の体制を書く

法務の職務経歴では、会社概要と法務部の体制が、経験の重さを伝える土台になります。まず下の画像の3つのポイントを押さえましょう。

法務の職務経歴の書き方のポイント(注釈付き)
職務経歴の書き方のポイント

1つ目の会社概要は、法務の場合とくに大切です。上場の有無で株主総会や開示の仕事の重さが、業界でどんな業法(その業界に適用される法律)や契約を扱ってきたかがわかります。

× NG例

2018年4月〜現在 法務部

契約書の作成・審査、法律相談対応、株主総会関連業務、コンプライアンス対応

ここが惜しい

  1. 業務の名前を並べただけで、契約の種類や件数、自分が担った範囲がわかりません。
  2. 会社の業界や上場区分がないため、機関法務や業法対応の経験の重さが伝わりません。
  3. 法務部の人数や分担がないと、一人で幅広く見ていたのか、分野を任されていたのかを判断できません。

○ OK例

事業内容:法人・家庭向けの電力・ガスの小売、再生可能エネルギー発電所の開発・運営(中略)従業員数:1,850名(東証プライム上場)

【体制】法務部 7名(契約審査・機関法務・コンプライアンスを分担)

【担当】契約審査(月平均約45件、うち英文 約4件)。発電所用地の賃貸借・地上権設定、コーポレートPPA(企業向けの電力購入契約)、海外メーカーとの蓄電池の調達契約など

ここが評価される

  1. 業界・規模・上場区分があるので、扱ってきた契約の種類や株主総会の規模が想像できます。
  2. 法務部の人数と分担を書いているため、自分が担ってきた範囲がはっきりします。
  3. 業界特有の契約を具体的に挙げ、略語には一言で説明を添えているので、他業界の採用担当にも経験の中身が伝わります。

記入例では、法務部に移った最初の4年間(月平均約35件・国内契約が中心)と、主任になってからの4年半(月平均約45件・英文や業界特有の契約を含む)で行を分けています。件数と契約の種類の変化を並べると、任される案件が広がってきたことが一目で伝わります。

取引先名や案件の中身は書かない

法務は秘密に触れる仕事です。取引先名、交渉中の案件、訴訟や不祥事の具体的な内容は書かず、「海外メーカーとの調達契約」のように種類と件数で表します。秘密を守れる人かどうかも、職務経歴書の書き方から見られています。

迷いやすい情報は、次のように置きかえると経験の大きさを保ったまま書けます。

書かない情報置きかえ方の例
取引先・相手方の社名「海外メーカーとの蓄電池の調達契約」「工場・商業施設など約120社」
契約金額・具体的な取引条件「上限のない損害賠償条項に、上限額と対象外の場合を組み合わせた案を提示」と論点だけ
訴訟・係争の事件名や相手方「係争案件の外部弁護士との窓口(年〇件)」と種類・役割・件数だけ
内部通報・社内調査の中身「内部通報の一次対応(年〇件)」と件数だけ

契約審査・法務案件の実績:件数に加えて、日数・ひな形・交渉の結果まで書く

法務の成果は「トラブルが起きなかったこと」になりがちで、書きにくい項目です。そこで、事業部門から見て何が速く・楽になったかを数字で示します。

× NG例

多数の契約書審査を迅速かつ正確に行い、会社のリスク低減に貢献しました。

ここが惜しい

  1. 「多数」「迅速かつ正確」は本人の評価で、件数も日数もないため、どの程度の実績なのかがわかりません。
  2. 「リスク低減に貢献」は法務なら誰でも書ける言葉で、ほかの応募者との違いが見えません。
  3. 何を工夫して、事業部門の何が変わったのかが書かれていないため、応募先で再現できる力かどうかが伝わりません。

○ OK例

【実績】

審査依頼から初回回答までの日数:平均5.2日(2023年度)→3.1日(2025年度)

コーポレートPPAのひな形を作成(2024年)、同契約 計9件で使用

【取り組み】

定型契約のひな形12種類と審査依頼フォームを整備。契約 約4,800件を契約管理システムに移し、更新期限の通知を設定(2023年度)

ここが評価される

  1. 回答までの日数を年度つきで前後比較しているので、法務の対応が速くなったことが客観的に伝わります。
  2. 作ったひな形が実際に何件で使われたかまで書くと、事業部門の役に立った度合いがわかります。
  3. ひな形の数・移した契約の件数があるため、仕組みづくりの規模が具体的に見えます。

日数や件数は、管理台帳やシステムから数え直す

法務の成果は売上のような数字になりにくいため、審査件数、初回回答までの日数、ひな形の数と使われた件数、研修の回数と受講者数などで表します。審査案件の管理台帳や契約管理システムの記録から、年度をそろえて数え直すと正確に書けます。

活かせる経験・知識・スキル:応募先で使える経験を3つに絞り、資格は正式名称で

職務経歴の要点を、応募先で使える形にまとめ直す項目です。法律の名前を並べるより、どんな契約や手続きを、どれだけ扱えるかを書きます。

× NG例

・法務経験8年

・契約書審査

・民法、会社法の知識

ここが惜しい

  1. 「法務経験8年」「契約書審査」は職務経歴を読めばわかるため、ここで書く意味がありません。
  2. 「民法、会社法の知識」は法務なら当然求められる内容で、どんな場面で使えるのかが伝わりません。

○ OK例

・8年半・月平均約45件の契約審査(電力・ガスの供給、発電所用地の賃貸借・地上権設定、コーポレートPPA、英文の調達契約など)

・株主総会・取締役会の運営補助(招集通知・想定問答・議事録案の作成、電子提供制度への移行)

・法人営業3年の経験を活かした、事業部門の目線に立った修正案と交渉方針の提示

ここが評価される

  1. 契約の種類を具体的に挙げているので、応募先の案件に近い経験かどうかを判断できます。
  2. 機関法務では作った書類と対応した制度変更まで書いており、補助の中身が伝わります。
  3. 営業経験という法務以外の経験を、法務の仕事にどう活かすかとセットで書いているので強みになります。

資格・語学は正式名称と実施団体、スコアを書く

ビジネス実務法務検定試験は「(東京商工会議所)」と実施団体を添え、級まで書きます。データの章で見たとおり、級によって合格率も求められる水準も大きく違うからです。英文契約を扱う求人では、TOEICなどのスコアと、実際に英文契約を何件扱ったかを組み合わせると説得力が増します。

PCスキル・ツール:ソフト名より「何に使ったか」

法務のPCスキルは、Wordの変更履歴での修正案づくりと、契約の管理が中心です。ツールで何を管理・作成したかまで書くと、実務の水準が伝わります。

× NG例

・Word、Excel:一通り使用可能

・契約管理システム:使用経験あり

ここが惜しい

  1. 「一通り」では、修正案を変更履歴で作れるのか、ひな形を管理できるのかがわかりません。
  2. 契約管理システムを「使っていた」のか「導入や移行を担った」のかが区別できません。

○ OK例

Word:変更履歴とコメントでの修正案の作成、ひな形の作成・管理

契約管理:契約約4,800件の移行、更新期限の通知設定、審査日数の集計

Excel:審査案件の管理台帳、研修受講者の集計

ここが評価される

  1. Wordでの作業を法務の仕事の言葉で書いているので、任せられる作業がわかります。
  2. 契約管理は移行の件数と設定した機能まであり、職務経歴の数字ともつながっています。

自己PR:強みは2つまで、エピソードと結果を添える

自己PRは「困っていた状況 → 自分の行動 → 結果」の順に書きます。法務では、リスクを示したうえで、事業をどう前に進めたかを軸にすると差がつきます。

× NG例

私の強みは、法的リスクを見逃さない慎重さです。どんな契約でも細部まで確認し、問題点を指摘することで、会社をトラブルから守ってきました。

ここが惜しい

  1. リスクの指摘だけを強みにすると、「事業を止める法務」と受け取られるおそれがあります。
  2. どんな契約で何を見つけ、どう解決したのかという具体的な場面がありません。
  3. 結果が書かれていないため、応募先で同じ力を発揮できるかどうかが伝わりません。

○ OK例

リスクを示すだけでなく、事業を進める落としどころを示す力

営業時代に契約の調整で商談が止まった経験から、審査では問題点に加えて代わりの条項案と交渉の優先順位を添えて回答しています。2024年のコーポレートPPAでは、上限のない損害賠償条項に上限額と対象外の場合を組み合わせた案を示し、合意に至りました。

ここが評価される

  1. 見出しで「リスクを示すだけではない」と打ち出しているので、事業部門と組める法務であることが一言でわかります。
  2. なぜその進め方をするのかを営業時代の経験から説明しており、強みに説得力があります。
  3. 相手方や金額は伏せたまま、条項の論点と合意という結果を書いており、秘密を守る姿勢も伝わります。
記入見本つきの法務向けテンプレートを見る

タイプ別:法務の職務経歴書の書き分け方

同じ法務でも、法務部の人数や扱う案件、これまでの職場によって、採用担当が見るポイントは変わります。まずは全体像を表で確認し、そのあと自分に近いタイプの解説を読んでください。

タイプ採用担当が見るポイント強調したい経験・数字
一人法務・少人数の法務幅広い分野を一人で回し、外部の弁護士を上手に使えるか担当分野の数、契約の件数、外部への相談の件数と使い分け
上場企業の法務部(分業)担当分野の深さと、会社法や開示の手続きを正確に進められるか担当分野、総会・取締役会の回数、研修や通報対応の件数
英文契約・国際法務英語で契約を読み、交渉し、海外の法律事務所と動けるか英文契約の種類と件数、関わった国・地域、スコア
法律事務所から企業へ(弁護士・パラリーガル)依頼者の立場から、会社の一員として判断する立場に移れるか扱った分野と件数、企業の依頼者の業種、事業側に立った経験

記入例の人物は、上場企業の法務部で契約審査を中心に担うタイプです。営業から法務に移った経歴は、どのタイプでも「事業部門の事情がわかる法務」として強みになります。

一人法務・少人数の法務

中堅・中小企業やスタートアップでは、法務の担当が1〜2名ということも珍しくありません。契約から規程、総会、知的財産まで一人で見る分、担当分野の広さと、外部の弁護士との使い分けが評価の中心になります。

職務経歴書に書きたいこと

  • 法務の体制(担当の人数、所属部署、顧問の法律事務所の有無)
  • 担当した分野の種類と、それぞれの件数(契約・規程・商標・総会など)
  • 自分で完結した範囲と、外部の弁護士に相談した範囲の線引き
  • 少ない人数で回すための仕組み(ひな形、依頼の受付方法など)

記入例

【体制】管理部 法務担当 1名(上長は管理部長)。顧問の法律事務所と連携

【担当】契約審査(月約25件)、社内規程の改定、商標の出願・更新管理(国内14件)、株主総会の準備、社内の法律相談

【取り組み】自分で完結する契約と、顧問弁護士に相談する契約の基準を作成。外部への相談を年約40件から約18件に絞り、相談1件あたりの準備を厚くした

ポイント

  1. 一人で担っている分野が並び、仕事の幅がひと目でわかります。
  2. 外部への相談を「減らした」だけでなく、相談の質を上げた点まで書いているので、弁護士任せにしない判断力が伝わります。

よくある落とし穴

「法務全般を一人で担当」とまとめるケースです。幅広さは強みですが、分野ごとの件数がないと、どれも浅い経験に見えてしまいます。主な分野は件数をつけて書き分けましょう。

上場企業の法務部(分業)

法務部が数名から数十名の会社では、契約審査・機関法務・コンプライアンスなどを分担していることが多くあります。自分の担当分野を深く書き、ほかの分野は関わり方を正直に書くのが基本です。

職務経歴書に書きたいこと

  • 法務部の人数と分担、自分の担当分野
  • 機関法務:株主総会・取締役会の回数と、作成した書類(招集通知・議事録案など)
  • コンプライアンス:研修の回数と受講者数、規程の整備、通報や相談の対応件数
  • 制度改正への対応(何の改正に、いつ、どう対応したか)

記入例

【担当】機関法務:取締役会の付議事項の事前確認と議事録案の作成(年14回)、株主総会の招集通知・想定問答の作成

コンプライアンス:内部通報の一次対応(年約30件)、管理職向けのハラスメント防止研修の企画(年4回、延べ約360名)

ポイント

  1. 担当分野ごとに回数と件数があるので、それぞれの経験の量がわかります。
  2. 内部通報は件数だけを書き、中身には触れていないため、秘密を扱う姿勢も伝わります。

株主総会では、会場や受付などの運営は総務部、手続きの適法性の確認や想定問答は法務部と、分担していることがよくあります。法務の職務経歴書では、法律面で何を確認し、何を作ったかを中心に書くと、総務の仕事との違いがはっきりします。

よくある落とし穴

担当していない分野まで「経験あり」と書くケースです。分業の会社の出身者は、面接で担当外の分野を深く聞かれることがあります。補助や一部の担当は「補助」と書き、主担当の分野と区別しましょう。

英文契約・国際法務

海外の取引先や子会社を持つ会社では、英文契約の経験を条件や歓迎要件にする求人もあります。データの章で見たとおり、海外の業務にかかる法務は、担当していない人も3割あまりいる経験です。語学のスコアだけでは不十分で、英文契約の種類と件数、交渉にどこまで関わったかが見られます。

職務経歴書に書きたいこと

  • 英文契約の種類(販売代理店・ライセンス・秘密保持・調達など)と月の件数
  • 審査だけか、相手方との交渉まで担ったか
  • 関わった国・地域と、現地の法律事務所とのやり取り
  • 語学の試験のスコアと受験年月

記入例

【担当】英文契約の審査(月約15件。販売代理店契約・ライセンス契約・秘密保持契約など)、海外子会社3社の法務相談、現地の法律事務所との窓口

【取り組み】英文の秘密保持契約のひな形と、条項ごとに譲れる範囲をまとめた社内向けの一覧を作成。事業部門が相手方と直接やり取りできる範囲を広げた

ポイント

  1. 英文契約の種類と件数があるので、入社後すぐに任せられる案件がわかります。
  2. 譲れる範囲の一覧は、法務が交渉の前面に立たなくても事業が進む仕組みで、事業への関わり方が伝わります。

記入例の人物は英文が月約4件と多くありませんが、契約の種類とTOEICのスコアを並べて、経験を正確に伝えています。

よくある落とし穴

「英文契約の審査経験あり」とだけ書くケースです。秘密保持契約を数件読んだ経験と、ライセンス契約の交渉を重ねた経験では、任せられる仕事がまったく違います。種類と件数で正確に書きましょう。

法律事務所から企業へ(弁護士・パラリーガル)

法律事務所で働いてきた弁護士やパラリーガルが企業の法務に移るときは、外から助言する立場から、会社の一員として判断する立場に移れるかが見られます。事務所での専門性に加えて、事業の側に立った経験を探して書きましょう。

職務経歴書に書きたいこと

  • 扱った分野(企業法務・紛争・知的財産など)と、事件・案件の件数
  • 企業の依頼者の業種と規模(依頼者名は書かない)
  • 依頼者の社内に入り込んで動いた経験(出向、常駐、社内研修の講師など)
  • 弁護士は登録年と、企業で必要になる分野(契約・機関法務など)の経験

記入例

【担当】企業法務を扱う法律事務所で、弁護士5名の補助として契約書の一次チェック(月約30件)、商業登記・株主総会の書類の作成、判例・文献の調査

【取り組み】依頼の多い契約の種類ごとに確認項目の一覧を作り、事務所内で共有。一次チェックの戻りを減らした

ポイント

  1. 補助の立場でも、件数と作った書類の種類で、企業の法務で使える経験が伝わります。
  2. 確認項目の一覧づくりは、企業の法務部でのひな形整備と同じ発想で、仕組みで仕事を回せる人だとわかります。

よくある落とし穴

依頼者名や事件名を、経験の証として書くケースです。守秘義務に触れるうえ、企業の採用担当にはかえって不安を与えます。業種・分野・件数で表しましょう。

あわせて読みたい:総務の職務経歴書の書き方

2026年の法務とAI:職務経歴書にどう書くか

最初にお伝えしたいのは、AIの使い方や、AIの経験を求める度合いは応募先によって大きく違うということです。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」では、AIを導入している企業は従業員1,001人以上で8割近くにのぼる一方、101人以下では16.6%にとどまりました。

法務は秘密の多い契約書を扱うため、生成AIの利用を認めていない会社も少なくありません。AIを使った経験がないことだけで、書類選考で不利になると考える必要はありません。まずは求人票に「生成AI」「リーガルテック」「AIツール」などの記載があるかを確認しましょう。記載があれば具体的に書き、なければPCスキル欄に1行添える程度で十分です。

法務で現実的なAIの使い方

同じIPAの調査では、AIの用途として「文書・音声の要約、翻訳、校正」が82.5%と最も多くなっています。長い文書を読み、比べ、まとめる法務の仕事と重なる部分が多く、2026年時点では次のような使い方が現実的です。

  • 英文契約の条項の要約や、和訳の下書きをつくる(結論は原文で確認する)
  • 法改正やガイドラインの公表資料を要約し、社内向けのお知らせの下書きをつくる
  • 契約審査の支援サービスで、条項の抜けや自社のひな形との違いを洗い出す
  • 研修資料や社内のQ&Aの下書き、よくある質問への回答案をつくる

ただし、生成AIは、もっともらしい誤りや、実在しない条文・裁判例を示すことがあります。法務では、AIの出力を原文や条文で確かめ、最後の判断を自分で行う工程が欠かせません。

「何の業務で・どう使い・どう確かめたか」を書く

AIの経験は「AIを活用して効率化」と書くだけでは伝わりません。使った業務・情報の扱い・確かめ方の3つをセットで書きます。

× NG例

生成AIを活用して契約書レビューを効率化し、業務時間を大幅に削減しました。

ここが惜しい

  1. どの契約の、どの作業に使ったのかがわからず、「使ったことがある」以上の情報がありません。
  2. 契約書をそのままAIに入力していないか、出力を確かめたかが書かれておらず、秘密を扱う法務として任せられるか判断できません。

○ OK例

生成AI:社内で認められたツールで英文契約の条項要約の下書きを作成。結論は原文と照合して判断(2025年〜)

ここが評価される

  1. 「英文契約の条項要約の下書き」と、AIに任せた範囲が限られていることがわかります。
  2. 「社内で認められたツール」「原文と照合して判断」と書いているので、情報の扱いと最後の判断を自分で担う姿勢が伝わります。
  3. 記入例ではPCスキル欄に1行だけ書いています。秘密を扱う職種では、この程度の控えめな書き方が自然です。

使うとき・書くときの注意点

契約書には、取引条件や相手方の情報が含まれ、秘密保持の義務がかかっていることも多くあります。AIの経験を書くときは、次の点がわかるようにしましょう。

  • 取引先名・金額・個人情報など、秘密に当たる情報を外部のAIに入力していない
  • 会社が認めたツールを、社内ルールの範囲で使った
  • AIの出力をそのまま使わず、原文・条文・公的な資料で確かめた
  • 使った経験を盛らない。面接で「AIの要約のどこを直したか」と聞かれても答えられる範囲で書く

AIを使っていない・禁止の職場だった人は

法務部門では、秘密を守るためにAIの利用を認めていない会社も珍しくありません。ルールに従って情報を守ってきたこと自体が、法務として大切な姿勢です。

代わりに、審査の手間を仕組みで減らした経験を書きましょう。ひな形の整備、審査のチェックリスト、依頼フォーム、契約管理の見直しなどは、AIを使った効率化と同じ「仕事のやり方を自分で変えられる力」を示します。記入例の初回回答までの日数の短縮も、AIを使わずに仕組みで出した成果です。

実績の数字が書けないときの対処法

「法務の仕事は数字にならない」と感じる人も、審査の依頼メールや管理台帳、契約管理システムには記録が残っています。見る角度を変えれば、書ける数字は必ず見つかります。

審査件数を数えたことがない

審査依頼のメールや受付フォーム、管理台帳から、直近の3〜6か月の件数を数えて月平均を出します。契約の種類ごとに分けると、得意な分野も見えてきます。
例:「契約審査 月平均約30件(業務委託・売買が約6割、秘密保持契約が約3割)」

成果が「トラブルが起きなかった」ことしかない

トラブルがなかったこと自体は、扱った量と並べると成果になります。あわせて、外部への相談の件数や、ひな形が使われた件数など、仕組みの効果を数えます。
例:「秘密保持契約のひな形を改訂し、年約120件で使用。相手方からの修正要求が多かった条項を見直した」

訴訟や不祥事対応など、書けない案件が中心だった

案件の中身は書かず、種類・役割・件数で表します。自分が担った作業を具体的にすると、案件を伏せても経験の重さは伝わります。
例:「係争案件 年約3件で外部弁護士との窓口を担当。社内の資料の収集と時系列の整理、経営への報告資料の作成」

上長や弁護士の確認を受けていて、自分の成果と言いにくい

一次審査を担った件数と、自分で完結できた範囲を正直に書きます。判断の範囲を正確に書くことは、採用担当が知りたい情報そのものです。
例:「契約審査の一次対応 月約25件。定型の契約は自分で完結し、非定型の契約は論点を整理して上長に回付」

あわせて読みたい:内部監査の職務経歴書の書き方

提出前のチェックリスト

書き終えたら、提出前に次の項目を確認しましょう。

  • 職務要約に、法務の経験年数・業界・主な担当分野と成果が入っている
  • 会社の業界・規模・上場区分と、法務部の人数・分担を書いている
  • 契約審査は、契約の種類・月の件数・英文の有無を書いている
  • 機関法務やコンプライアンスは、主担当か補助かと、担った作業を書いている
  • 回答までの日数やひな形の数など、改善の成果を前後の数字で書いている
  • 取引先名・交渉中の案件・訴訟などの具体的な内容を書いていない。AIを使った場合は、社内で認められたツールか、出力をどう確かめたかを添えている
  • 資格は正式名称と実施団体を添え、A4で2枚程度に収まっている

状況別の無料テンプレート

ブランク、転職回数、未経験…気になる事情があるなら、状況別の記入見本も


職種の書き方はこの記事で、事情の伝え方は状況別の記入見本で。2つを組み合わせれば、書きにくいところも迷わず書けます。

よくある質問

弁護士資格がないと、法務の転職では不利になりますか?

企業内弁護士は増えていますが、資格を条件にするかどうかは求人によって違うため、まず求人票を確認しましょう。採用の現場では、資格より応募先の案件に近い実務の経験が重く見られることが多いと言われます。資格がない人は、扱った契約の種類と件数、自分で判断してきた範囲を具体的に書くことで、実務の力を示せます。

訴訟や不祥事の対応に関わった経験は、どこまで書いていいですか?

事件名、相手方、社内の処分の内容など、案件が特定できる情報は書きません。「係争案件の外部弁護士との窓口(年約3件)」のように、種類・役割・件数だけで表します。面接で聞かれた場合も、同じ範囲で答えられるようにしておきましょう。

法務の経験が浅く、営業など他部署の経験が長いです。どう書けばいいですか?

他部署の経験も省かずに書き、法務の仕事にどう活きているかをつなげます。記入例のように、営業の経験を「事業部門の目線に立った修正案と交渉方針の提示」と書くと、法務の経験年数が短くても強みになります。法務の経験は、件数や作ったひな形など小さな数字でも具体的に書きましょう。

ビジネス実務法務検定試験は何級から書けばいいですか?

取得していれば、級にかかわらず書いてかまいません。ただし法務の実務経験がある人は、資格欄より実務の件数や成果を厚く書くほうが伝わります。

AIを使った経験がないと、法務の転職で不利になりますか?

AIの活用をどの程度求めるかは応募先によって大きく違い、経験がないことだけで不利になるとは限りません。法務部門では、秘密を守るためにAIの利用を認めていない会社もあります。求人票にAIやリーガルテックの記載がある場合は、ひな形やチェックリストで審査の手間を減らした経験を具体的に書きましょう。

この記事の記入例テンプレートを無料でダウンロード

Word・Excel・PDFの3形式に対応。空欄テンプレートと記入見本のセットです。

Author

佐藤 大貴

レジュメラボ編集責任者/アースダイバー代表

佐藤 大貴

人材紹介の会社で、キャリア系メディアの編集長をしていました。転職やキャリアをテーマにした記事づくりに長く関わり、2019年にアースダイバー株式会社を立ち上げました。編集長時代、たくさんの求職者の方やキャ…

Share

前の記事
一覧へ戻る
次の記事