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「カスハラで辞めた」って、職務経歴書や面接で言っていい? 編集長の答え

「カスハラで辞めた」って、職務経歴書や面接で言っていい? 編集長の答え

こんにちは。レジュメラボ編集長の佐藤です。

2026年10月1日から、すべての会社に、カスハラ(カスタマーハラスメント)を防ぐための対策が義務づけられました。ニュースでは「会社は何をすべきか」がよく取り上げられています。

でも、すでにカスハラが原因で仕事を辞めた人にとって、気になるのはたぶんそこではありません。

「次の面接で『カスハラで辞めました』と言ったら、打たれ弱い人だと思われないか」

販売、介護、医療事務、コールセンター。お客さんと向き合う仕事をしてきた人から、実際によく聞く悩みです。

先に私の答えを言うと、言っていいと思います。ただし、どこで、どう言うかで、相手の受け取り方はかなり変わります。今日はそこを、データと採用する側の目線から掘り下げてみます。

カスハラで職場を離れる人は、少数派ではない

まずは数字から。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(2024年5月公表)によると、過去3年間にカスハラを受けた働き手は10.8%でした。勤務日にほぼ毎日お客さんと接する人に限ると、17.4%に上がります。業種別では、生活関連サービス・娯楽業(16.6%)、卸売・小売業(16.0%)、宿泊・飲食サービス業(16.0%)が高くなっています。

同じ調査では、カスハラを受けた人に、心と体にどんな影響があったかも聞いています。受けた頻度別に並べたのが、次のグラフです。

カスハラを受けた頻度別の心身への影響。仕事に対する意欲が減退したのは、一度だけ受けた人で29.5%、何度も繰り返し受けた人で57.5%。眠れなくなったのは11.6%と26.4%
カスハラを受けた頻度別に見た、心身への影響

出典:職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(厚生労働省)

一度だけなら「腹が立った」で済んでも、繰り返されると、仕事への意欲が落ちた人は約6割、眠れなくなった人は4人に1人。繰り返しのカスハラは、気持ちの問題ではなく、働き続けられるかどうかの問題だということが、数字からもわかります。

実際に辞める人もいます。ベリーベスト法律事務所が2026年7月に行った調査(毎日お客さんと接する1,000人)では、カスハラを「何度も」受けた人の26.9%が、転職活動や退職の申し出など、実際に辞める方向へ動いていました(同事務所の発表)。回答者は約180人と少なめで、法律事務所が自社サービスの紹介とあわせて出した調査なので、目安として見てください。

会社の側から見ても同じです。厚労省の調査では、カスハラにあたる事例があった企業のうち、22.6%が「社員の休職・離職」という損害を受けたと答えています。カスハラで職場を離れることは、もう珍しい話ではありません。

「我慢した」のに、会社が動かなかった人も多い

もう一つ、見てほしいデータがあります。カスハラを受けたあと、本人がどうしたのか。そして、勤務先はどう対応したのか、です。

カスハラを受けた人がその後にとった行動。社内の上司に相談した38.2%、何もしなかった35.2%、社内の同僚に相談した26.8%、会社を退職した4.5%
カスハラを受けたあとに、本人がとった行動
カスハラを知ったあとの勤務先の対応。相談にのり要望を聞いた39.2%、特に何もしなかった29.8%、相談にのってくれなかった6.9%、相談を理由に不利益な扱いを受けた5.5%
カスハラを知ったあとの、勤務先の対応

出典:職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(厚生労働省)

3人に1人は、誰にも言わずに何もしなかった。そして、勤務先がカスハラを知っても、3割は「特に何もしなかった」。この調査の時点では、カスハラ対策を「特にしていない」企業も55.8%ありました。

つまり、カスハラで辞めた人の多くは、すぐに投げ出したのではなく、我慢して、相談して、それでも状況が変わらなかった人たちです。この前提は、あとで伝え方を考えるときにも大事になります。

採用担当が引っかかるのは「カスハラ」という言葉ではない

採用担当が見ているのは、人のせいにしていないか、同じことが起きたらまた辞めないか、の2つ
この章のまとめ:採用担当が見ている2つのこと

では、面接で「カスハラが理由で辞めました」と言うと、採用する側はどう受け取るのか。ここからは、キャリア系メディアの編集長として、転職する人と採用する側の両方の声を聞いてきた私の見立てです。

採用担当が気にするのは、カスハラという言葉そのものではありません。気にしているのは、次の2つです。

  • 人のせいにしていないか:「ひどい客ばかりだった」「会社が守ってくれなかった」で話が終わると、うちに来ても不満が出たら同じことを言うのでは、と心配になります。
  • 同じことが起きたら、また辞めないか:特に、同じ接客の仕事に応募する場合です。お客さんと接する以上、理不尽な人にゼロで出会うことはないからです。

逆に言えば、この2つに答えられていれば、カスハラで辞めたこと自体はマイナスになりません。むしろ、10月から会社にカスハラ対策が義務づけられたいま、「カスハラは個人が我慢するものではない」という考え方は、世の中の前提になりつつあります。

RevCommが10月7〜9日に行った調査(カスハラを受けた経験のある400人)でも、義務化のあと意識が変わったと答えた人は70.3%。いちばん多かったのは「個人の我慢は不要」(56.9%)でした(同社の発表)。通話分析サービスを提供する会社の調査なので、その点は割り引いて見てください。ただ、働く側の空気が変わってきているのは確かだと思います。

職務経歴書には、書く?書かない?

職務経歴書には退職理由や不満はわざわざ書かず、クレーム一次対応の件数や引き継ぎ基準づくり、マニュアル化、新人指導などの仕事の進め方を実績として書く
この章のまとめ:書かなくていいこと、書けること

ここは、はっきり分けて考えるのがおすすめです。

退職理由は、書かなくていい

職務経歴書には、退職理由を書く決まった欄はありません。履歴書の職歴欄も、自分から辞めた場合は「一身上の都合により退職」で問題ありません。カスハラのことは、書類にはわざわざ書かず、面接で聞かれたら自分の言葉で話す。これがいちばん誤解されにくい形です。

書類に「カスハラにより退職」とだけ書くと、事情を説明する余地がないまま、読み手の想像にまかせることになってしまいます。説明は、顔が見える面接でしたほうが伝わります。

クレーム対応の経験は、実績として書ける

一方で、職務経歴の欄には、むしろ書いてほしいことがあります。難しいお客さんへの対応を、どう回してきたかです。

お客さんと向き合う仕事では、クレームや難しい要望への対応は、立派な業務経験です。たとえば、こんな書き方ができます。

  • 店舗のクレーム一次対応を担当(月20件程度)。対応記録をつけ、上席への引き継ぎ基準を店長と一緒に決めた
  • 電話での問い合わせ対応(1日40件程度)のうち、長時間化した案件の対応手順をチームでマニュアル化した
  • 新人スタッフ4名に、難しい問い合わせを受けたときの報告・相談の流れを教えた

数字は一例です。大事なのは、カスハラの「被害」ではなく、難しい場面での「仕事の進め方」を書くことです。

ただ、無理に前向きな話に仕立てる必要はありません。つらかった経験を「成長の糧になりました」ときれいにまとめなくても大丈夫です。書けることがあれば書く、くらいの気持ちで十分です。

お客さんと接する職種の書き方は、それぞれの記入見本でそのまま確認できます。

面接での伝え方:損する言い方、伝わる言い方

面接では、事実を短く、自分がどうしたか、次にどうしたいか、の順番で話す
この章のまとめ:面接で話す順番

面接で退職理由を聞かれたときの話し方を、よくある3つのパターンで考えてみます。共通するコツは、「事実を短く」「自分がどうしたか」「次にどうしたいか」の順で話すことです。

パターン1:同じ接客の仕事に応募する

× NG例

お客様からの理不尽なクレームがひどく、会社も守ってくれなかったので辞めました。

ここが惜しい

  1. 事実よりも感情が前に出ていて、人のせいにしているように聞こえます。
  2. 同じ接客の仕事を選んだ理由がないので、「うちでも同じことが起きたら辞めるのでは」と心配されます。

○ OK例

同じお客様から、長時間の叱責や繰り返しの要求が続き、上司と相談しながら対応してきました。ただ、店舗として対応の決まりがなく、改善が難しいと判断して退職しました。接客の仕事は好きなので、対応の方針や相談の仕組みが整った環境で、もう一度お客様と向き合いたいと考えています。

ここが評価される

  1. 事実を短く述べたうえで、上司に相談するなど自分も手を尽くしたことが伝わります。
  2. 辞めた理由を「接客が嫌になったから」ではなく「仕組みがなかったから」と整理できています。
  3. 次にどんな環境で働きたいかが具体的で、応募先を選んだ理由にもつながります。

パターン2:お客さんと接しない仕事に変える

× NG例

もう人と接する仕事はしたくないので、事務職を希望しました。

ここが惜しい

  1. 「逃げ」の転職に見えやすく、事務職を選んだ前向きな理由が伝わりません。

○ OK例

前職では窓口対応のほかに、予約管理や売上の集計、マニュアルづくりも担当していました。カスハラが続く環境で働き方を見直したときに、裏方の仕事でいちばん力を発揮できると感じたため、事務職に挑戦したいと考えました。

ここが評価される

  1. カスハラは「きっかけ」として触れるだけにとどめ、話の中心を「やりたい仕事」にしています。
  2. 事務につながる経験を具体的に挙げているので、未経験でも任せられそうだと伝わります。

パターン3:心や体の調子を崩して休んでいた

× NG例

カスハラでうつになり、しばらく何もできませんでした。

ここが惜しい

  1. 体調の詳しい話は、言わなくてかまいません。話しすぎると、今の状態を必要以上に心配されることがあります。

○ OK例

前職で続いたカスハラの影響で体調を崩し、退職してしばらく療養していました。現在は回復していて、主治医からもフルタイムで働けると言われています。

ここが評価される

  1. いまは働ける状態だということを、はっきり伝えることがいちばん大切です。
  2. 病名や治療の詳しい中身まで話す必要はありません。

ブランクの期間がある場合の職務経歴書の書き方は、ブランクがある人向けの記入見本が参考になります。

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やってはいけないこと

前の会社や、お客さんの名前・具体的な場所を出して話すことです。採用担当は、「うちのこともよそで同じように話すのでは」と感じてしまいます。事実は「どんなことが、どれくらい続いたか」だけで十分伝わります。

逆に、面接で「カスハラ対策」を聞いていい

2026年10月から会社に義務づけられたカスハラ対策と、それに対応した面接での質問例
この章のまとめ:会社の義務と、面接での聞き方

ここまでは「どう話すか」でしたが、最後に、立場をひっくり返した話をさせてください。あなたのほうからも、応募先のカスハラ対策を聞いていいんです。

10月1日から、会社には次のような対策が義務づけられました(厚生労働省の指針の内容をまとめたfreeeの解説より)。

  • カスハラへの方針を決めて、社員に知らせる
  • 相談できる窓口や体制をつくる
  • カスハラが起きたら、事実を確かめ、社員を守り、再発を防ぐ
  • 相談した人のプライバシーを守り、相談を理由に不利益な扱いをしない

法律で決まった対策なので、それについて質問するのは失礼でもなんでもありません。たとえば、こんな聞き方ができます。

  • 「お客様とのトラブルがあったときは、どなたに相談して、どう対応する流れになっていますか」
  • 「理不尽な要求があった場合の対応方針や、マニュアルのようなものはありますか」
  • 「店舗や現場で判断に迷ったとき、上の方が引き取ってくれる仕組みはありますか」

答えが具体的に返ってくる会社は、現場をちゃんと守ろうとしている会社です。逆に、言葉を濁されたら、それも一つの判断材料になります。同じことを繰り返さないために、職場を選ぶ。それも、立派な転職の準備です。

おわりに

カスハラで辞めたことは、あなたが弱かったからではありません。厚労省のデータが示しているように、多くの人が我慢し、相談し、それでも変わらなかった末に、職場を離れています。

面接では、事実を短く、自分がどうしたか、次にどうしたいか。この順番で話せば、カスハラで辞めたことはマイナスにはなりません。そして、次の職場を選ぶときは、遠慮せずに「守ってもらえるか」を確かめてください。

応援しています。

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Author

佐藤 大貴

レジュメラボ編集責任者/アースダイバー代表

佐藤 大貴

人材紹介の会社で、キャリア系メディアの編集長をしていました。転職やキャリアをテーマにした記事づくりに長く関わり、2019年にアースダイバー株式会社を立ち上げました。編集長時代、たくさんの求職者の方やキャ…

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